空也とアクア

IFで空也のお説教 アクア視点3人称


「君の線は、弱いよ」
 空也はまっすぐに目を見てそう言った。
「よわ、い……」
 初めて受けた批評の言葉に、アクアは目を見開く。
 弱い線、とはどういうことなのか。繊細で正確で、作業が早くて高性能で。そんな褒め言葉ばかりもらっていた彼には、弱い線というものが分からない。
 周囲の陣書きもみんな一流ばかりで、それぞれ長所短所はあるものの、ちっぽけな形容詞一つで粉々になるような陣を、アクアは知らない。
 だけど空也は
「そう、弱い」
 と、アクアの陣こそがそんな言葉で砕ける程度のモノだと、突きつけてくる。
「弱いって、弱いってどういうことですか」
 絞り出すような問いに、空也は答えをためらわない。
「君は、自分より魔力の強い人に、自分で書いた陣を使ってもらったことがないね?」
 確認のかたちではあったが、それは確信であり、事実だった。
 けれどその問いに素直にうなずけず、アクアは無意識に反論してしまう。
「……自分の陣は、全部自分で試してます。だから」
「そんなの関係ないよ。君よりもっと、強くないと」
「でも! おれだって精霊なんだから、魔力なら――」
 ぱさり、と空也が持っていた紙を机に置いた。
 そのわずかな音にさえ、アクアの言葉はさえぎられる。ついさっき自信たっぷりに言おうとしていたことが、途端にとても恥ずかしいことのように思えてくる。
 押し黙るアクアに、空也の追い討ちは容赦なかった。
「そうじゃない。そうじゃないよ、アクア。君の陣は弱い。きっと、次の風の精霊や雪の精霊の子たちの使用には耐えられない。前半の効果は正常に発揮できるだろうけど、後半までは魔力を通しきれない」
 今度こそ空也は断言した。証拠なんてどこにもないけれど、アクアには否定する材料もない。
「だけどっ、一般向けの陣にそんな強度――」
「いるよ」
 精一杯の悪あがきは、あっさりと封じられた。
「僕の事務所は一般家庭向けが主流だけど、それにだって耐久度は必要だよ。一度設置したら長期にわたってメンテナンス不要っていうのがこの事務所のモットーなのは知ってるよね。君の陣はそのラインに達してない。家庭の照明なんかだと、かなりの回数つけたり消したりするだろう? 半年やそこらで壊れるようじゃだめなんだ。僕はこの事務所を必要以上に大きくしたいとは思ってないんだ。正直、今の二人体制で充分だと思ってる。陣書きを増やしたとして一人か二人までにしたい。分かるね?」
 空也の声が、ふいに優しくなる。
「僕は君と二人でやっていきたいんだ。これからもずっと、ちゃんと商売になる事務所にして、常連さんもしっかり作って、こつこつ二人で陣を書いていきたいんだよ」


20??/??/??

IFアクアの魔法陣は本編アクアには及ばんだろうなって
空也といる時は普通の子なんです、まともなんです