クラスの人から見た熱斗 とある男子視点 高1とか
クラスの人から見た熱斗 とある男子視点 高1とか
席替え後の掃除時間、女子たちはロッカーの前を占拠して互いに慰め合っていた。残念だったね、次に期待しよう、あんた結構近くじゃないの。誰と、かというと、それはもちろん明坂熱斗だ。顔が整っていることと背が高いことを除けばただの男子だが、女子にとっては除いた二つがとても大切らしい。人格も成績も別段優れているわけじゃないのに、なんという見る目のなさ。ただし、本人は女子には一切目もくれず、男子との付き合いもそこそこなので、本気で付き合いたいというやつにはお目にかかったことがない。でも席が近いと嬉しいだって? 女はよく分からん。
ちなみに俺は明坂の隣になった。窓際で一番後ろというのはガッツポーズものだが、一人しかいない隣人がこれではちっとも嬉しくない。
なにしろ、俺は最近気付いてしまったのだ。やつのおかしな行動に。
昼休みになると消えるのは今に始まったことじゃないし、みんな気付いているだろう。一個上の先輩のところへ行っているらしい。一部女子が興奮気味に噂していた。俺の嫌いなタイプだ。女はちょっとぼんやりしてるくらいが可愛い。
それはさておき。俺が女子に退いてもらうのも億劫に思っていたロッカーへ歩いていく、あいつ。「荷物取りたいんだけど」の一言で一人分の隙間を作らせ、教科書を引っ張り出してすぐ離れる。俺たちがたむろってる窓際へ戻ってきて、「なあ」と絡みに行った吉野の手を、明坂は何気なく避けた。
これだ。いつも必ずという訳ではないけれど、明坂はよく人を避ける。そりゃあ男に肩組まれて喜ぶ男はそうそういないが、明坂の場合はどこか違う。べたべたされるのが嫌ならそう言っておけばいいことだ。実際俺は吉野があんまりウザくて言ってやったことがある。そしたら前ほど寄って来なくなった。明坂は人に触れられたくないなんて様子はおくびにも出さず、ただするりと身をかわすのだ。男子だけじゃない、女子だって先生だって同じようにかわす。しかも毎回実に自然で、俺が気付いたのだって偶然だろう。
休み時間だったか昼休みだったか、後輩と一緒の明坂を見たのだ。俺は誰でもいいから古典の辞書を借りたくて、ラッキーと思って声をかけようとしてやめた。一緒にいたのは女子と男子が一人ずつ。廊下の端をきっちり空けて横並び。明坂は面倒見のいいお兄ちゃん面で右腕を女子のほうに占拠させ、それはもう機嫌が良さそうだった。
なぜかその時『彼女連れには声が掛けづらい法則』が発動して、その違和感が記憶に残っていた。
明坂は吉野をあしらって、荷物をまとめると教室から出て行く。吉野は俺の隣にやってきて、ヒソヒソ声で言う。
「なー、お前でもいいから席替わってくれよ」
「なんで?」
「明坂に断られた。俺の周り女子多いから嫌だって」
「いや、なんで俺の席が良いんだって話」
「斜め前! 西さんだろ! 超可愛いだろ」
必死に言う吉野を見て、少し考える。
「……断る」
「なんでだよっ」
俺の前にはちょっとぼんやりしたそこそこの女子が座っていた。
モブ視点の話をしてて思い出し、発掘&手直し
苑美や柊の変なとこを気にするのは多少アホの子で、楓生や河音や熱斗に違和感見つけるのは聡い子だと思う、って当時のメモにありました
でもまあ男子なので、一人で気になって誰に言うでもなくそのうち忘れる、ってこれもメモしてありました